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号泣する準備はできていた
江國 香織
新潮社 刊
発売日 2006-06
ハッとするような切り口の鮮やかさにはいつも驚かされます 2006-0
7-16
「直木賞」受賞作の『号泣する準備はできていた』は12編の短編集です。
その中の「煙草配りガール」では、親しい2組の夫婦の修羅場ともい
える結構きわどい状況を描いています。奥底に潜んでいる感情を何気ない会
話の中から浮かび上がらせるテクニックは作家独自のものです。
「男」と「女」の過去の複雑にもつれた「赤い糸」はたどらない方が
よいように感じとりました。それにしても江國香織のハッとするような切り
口の鮮やかさにはいつも驚かされます。
短編に共通しているのは、柔らかな言葉や情景とは裏腹に、情念とい
う気持ちの混沌とした部分を描いていることです。詩的な言葉を選び、さら
りと描いているため、読後は重い気持ちにならないでしょう。
小説は、評論とは違い「行間の感情」を読むものです。微妙な感情の
動きを追いながら、読み手の頭の中に描かれるものはそれぞれ違うはずで
す。読者が自分の経験や人生と照らし合わせて読むのですから、様々な読み
方があって当然です。
直木賞を受賞したのは作家の実力の評価が正当に行われた結果だと再
確認しました。