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心は孤独な数学者
藤原 正彦
新潮社 刊
発売日 2000-12
名著『遙かなるケンブリッジ』は、藤原正彦の感性と古武士然とした立ち居
振る舞いとを明晰な文章で伝えるものだった。この数学者はどこにいても常
に日本人としての誇りを失わず、それでいて盲目的な愛国者にならないだけ
の冷めた目を併せ持つ稀有な人である。その著者が天才数学者3人、ニュート
ン、ハミルトン、そしてインドの神童ラマヌジャンの生き方をたどりつつ、
彼らの苦悩に満ちた日々を愛情豊かな、それでいて決して一面的にならない
冷静な筆致で跡づけて見せた。形の上では3人の評伝となっているのだが、そ
れは単に彼らの生涯と業績を描いたというものではない。著者はそれぞれの
人物が生きた場所を訪れ、彼らの在りし日をしのびつつ、同時にその天才と
しての業績、あるいはその性格的欠陥、懊悩(おうのう)の姿を見事に読者
の前に示して見せた。特にインドが生んだ天才ラマヌジャンの苦闘を描いた
章は、本書の中でも最も長く、そして最も波乱に富んだ軌跡を詳細に描き出
したもので、数学のもつ芸術性、美学をこれほど豊かに示す例はほとんどほ
かに見出せないものでありながら、それ故この天才の不遇に思わず天を仰ぐ
しかないのである。本書は単に天才とは何か、天才を生み出すものは何だっ
たのかを示すにとどまらず、たぐいまれな人物伝として高い評価を与えるべ
きものだろう。(小林章夫)
ニュートンよりライプニッツ 2006-04-18
とてもよく書けた作品です。よくこれだけ調べられたと感心します。これま
で一般には知られなかった科学者の裏側の伝記を読んだという満足感がこの
本にはあります。
ただ一つだけ気になるのは、ニュートンの部分で、ニュートンが主役
なのだからしかたがないのでしょうが、彼とまっこうから対立したライプニ
ッツについて、特にライプニッツの科学哲学について著者は不勉強なのでは
ないかと思えるふしがあります。著者は微積分成立をニュートンやライプニ
ッツといった個々人ではなく、時代精神の産物と結論づけています。しか
し、その当の時代精神という壁を乗り越えているのがライプニッツなので
す。しかしニュートンにはそこにこそ限界があったのです。例えば「素数の
音楽:マーカス・デュ・ソートイ著」という同じ数学者による本には、この
事実がほんの少しですが述べられています。(P.180参照) 手前味噌でまた
物理・数学、ましてやニュートン・ライプニッツが主なテーマの本ではあり
ませんが、(「縄文人の能舞台」ー副題:神々の数学史 )という本でも歴史
的かつ科学史的、特に東洋も含む世界的見地から両科学者の対立の真の意味
がふれられています。日本とニュートンの関係を知りたい人にはおすすめで
すね。